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オリンピックの夜

091213 125




何が原因だったのか、もう、すっかり忘れてしまったのですが(^^;
たしか、とまとが中学生の時の事だったと思います。

その夜、とまとは布団に入っても眠れないくらい、プンプン怒っていました。
「不公平や!」
と。
それを聞いて、隣りの布団の中から、母がねむそうな声で言いました。
「そうや。世の中言うのは、不公平なもんや。10秒しか走らんかっても金メダルは1個やし、2時間走った人も、金メダルは1個やもんな。」
「はあ?」
とまとは聞き返しました。
「オリンピックって、そうやろう? 100メートルを10秒で走った人も、マラソンで42キロ以上の距離を2時間かけて走った人も、貰えるのは同じ金メダルが1個だけや。不公平な話しやなあ。」
「そ、そう、やなあ。」
「柔道みたいに、最初から最後まで1人で闘った人も、金メダルは1人に1個。バレーボールのような団体競技で、交代しながら闘って勝っても、金メダルは1人に1個。不公平やなあ。」
「…うん。」
「でも、誰も文句なんか、言うてへんで。それどころか、みんな出場したがる。不公平でいっぱいやのに、不思議やなぁ」
「……」
「本を読むのが好きな私は、眼が悪いから本が読まれへん。いくらでも本を読める、眼のいいお前は、本を読むのが嫌い。これも、不公平やな。
用事が仰山あって、走りまわりたいくらいの私は、体も足も悪いから、ゆっくりとしか歩かれへんのに、元気なお前は、テレビの前から動きたがらへん。これも、不公平な話しや。
家の手伝いもせんと、テレビばっかり見てるお前の話を、朝から晩まで働いて、クタクタでねむたい私が聞いてやらなあかん。不公平な話しや。」
だんだん、素直に寝た方が、いいようだと感じ始めたとまと。
しかし、いったん話し始めた母からは、逃げられませんでした。
「例えば、うちは貧乏で、私の稼ぎだけでは食べて行かれへんから、生活保護の世話になってるけれども、選挙で投票できるのは1人。大きな会社の社長さんで、税金を何千万円も払ってる人も、選挙で投票できる人は1人。これも、不公平言うたら、不公平やわな。」
「う、うん。」
「何も悪い事なんかしてないのに、戦争で亡くなる人も、核ミサイルの発射ボタンを押す人も、私みたいに、マッサージで、1時間に1人の患者さんの肩コリしか治されへん人間も、いっぱい勉強して、ノーベル賞を取って、世界中の人の病気を治せるようなクスリを発明した人も、食べるものがなくて飢え死にする子供も、食べすぎて病気になって毎日沢山のクスリを飲まなあかん人も、みんな、生まれて来るのは一回。死ぬのも一回。命は一つや。」
「……」
「『世の中は不公平や』言うて、ふて腐れてる人間も、どうしたら、みんなが幸せになれるやろうかって事に力を尽くしてる、マザー・テレサのような人も、人生は一回きり。
ホンマに、世の中言うのは、不公平でいっぱいやなあ。」
「……」
黙っているとまとに、母はこう言いました。
「なあとまと。世の中は、誰にとっても多かれ少なかれ不公平なもんや。不公平や、と思うてない人間なんて、おらんかもしれん。ほんならな、みんなにとって不公平言うのは、公平な事なんやろか? それとも、不公平な事なんやろか?」
「へっ?」
「お前、暇やろう? ゆっくり考えてみ。ほんなら、母ちゃん寝るわな。おやすみ~」
そう言うと、母は頭から布団をスッポリ被り、本当に眠ってしまいました。

全ての人にとって不公平な世の中は、はたして公平な世の中なのか、それとも不公平な世の中なのか…
「地下鉄は、どこから電車を入れるんでしょうね?」
って問いと同じくらい、とまとは考え込んでしまいました。
そのうちに、とまとは、自分が何について怒っていたのかを忘れてしまいました(笑
そして、考えれば考える程、公平とか不公平かとかゆう事が、どうでもよくなってきました。
それよりも、
『みんな、生まれてくるのは一回、死ぬのも一回。命は一つ。ふて腐れて過ごしても、人の幸せの為に尽しても、人生は一回きりや』
とゆう言葉の方が、大きくなったのです。

100メートルを10秒で走っても金メダルは1個。
42.195キロを2時間かけて走っても、金メダルは1個。
だけど、どちらの選手も、不公平だ!とふて腐れたりはしていません。
一回きりの人生を、一生懸命に生きているだけ。

冬と夏との違いはありますが、オリンピックとゆう言葉を聞くと、この夜のことを思い出す、とまとでした。



追記
今週末は、パソコンの前を離れますので、頂いたコメントへの返事や、お礼訪問は、来週以降になってしまうと思います。
ごめんなさいm(__)m
次の記事は、皆さまへの返事とお礼訪問が完了してから、投稿させて頂きます。


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なぞなぞ

091213 080



いきなりですが、なぞなぞです。
使っても使っても、減らないもの、な~んだ。

とまとが小学校の高学年になった時。
その年、姉が働き始めた事もあって、とまとは、いつもより多い金額のお年玉を貰いました。
当時のとまとにとって、一万円は大金でした。
ポテトチップスなら、100個買える。
コーラも、100本買える。
大好きなアイドルのお正月映画も、子供料金だから、10回も見られる!
貰ったお金の使い道を、とまとはうっとりしながら考えました。
そんなとまとに、母が言いました。
「とまと、お金は、使ったら減るで!」

当たり前の話ですが、言われてとまとは、ハッとしました。
頭から冷水をかけられた気分です。
一万円は、とまとにとって、永遠に使いきれないお金のような気がしていたのです。
でも、そうではないのです。
一万円は、100円の100倍ですが、100回使ったら、ゼロになってしまうのです。
ずっと、100倍のままでは、いてくれないのだと、母に言われて初めて、とまとは気付きました。
「……使ったら、減るんや。」
「そうや、お金は、使ったら減るもんや。」
「ほんなら、このお金、使わんと貯金しとく!」
と、単純なとまとは言いました。
すると、母は笑って、
「貯金したら、預かり賃を取られるでぇ」
と、言いました。
今で言うところの、引き出す時の手数料のことですが、子供のとまとにはわかりません。
一万円を銀行や郵便局に預けたら、9800円になると言われて、預ける気持ちが失せました。
「じゃあ、ずっと引き出しの中にしまっとく!」
「ず~っと置いといたら、目減りするがな。」
とまとは、びっくりしました。
引き出しの中に入れておいても、お金が減るなんて!!
母が、嘘を言っているのだと思いました。
でも、母は言いました。
「今は、ポテトチップスが一袋100円かもしれんけど、それが、110円になったら、どうする? 今なら、一万円で100個買えるけど、110円になったら、90個しか買われへんで。それって、お金が減るのと同じとちゃうか?」
「うっ…」
物の値段は、いつまでも同じままじゃない。
物価なんて言う難しい言葉は理解できませんでしたが、お菓子もジュースも、いつか値段が上がる日が来ると知って、とまとは驚きました。
だったら、今使った方がいいんでしょうか?
それとも、上がるギリギリまで引き出しの中に入れておいて、直前に使ったらいいんでしょうか?
でも、使ったら、減る事に違いはないしなあ…
とまとは、真剣に悩みました。
そんな時、冒頭のなぞなぞを、母が言い出したのです。
「この世には、使っても使っても減らんもんがある。」
「使っても使っても、減らんもん?」
「そうや。そうゆうものを集める為にお金を使ったら、お金は、減らんことになるんとちゃうか?」
使っても使っても、減らんもの…
とまとは、考えました。

取ってもとっても減らないものは…年齢。
切っても切っても切れないものは…水。
じゃあ、使っても使っても減らないものは…???

「ほんまに、そんなもん、あんの?」
とまとは、根を上げて聞きました。
「ある!」
と、母。
そして、とまとの顔を見て、ニヤリと笑いながら言いました。
「それは、お前が持ってないものや。」
大きなヒントをくれたのですが、この時のとまとには、とうとう、分かりませんでした。

なぞなぞの答えをいつ聞いたのかは忘れてしまいましたが、答えは「知恵」でした。
「知恵は、なんぼ使っても減ることはない。むしろ、使えば使う程、増えるもんや。しかも、ちゃんと使ったら、人様に感謝される事もある。せやから、知恵を集める為に、お金を使ったら、ムダにはならんやろう?」

毎年、お正月になると、母の、この言葉を思い出します。
でも、残念なことに、とまとには、
「どうしたら知恵を集められるのか」
とゆう知恵がないので、結局、本を買うか、資格を取るくらいの事しか出来ないでいます。

どうお金を使ったら、知恵を集められるんだうろ?
集めた知恵を、どう使ったら、活かすことができるんだろう?
母の出してくれたなぞなぞは、奥が深くて、とまとは未だに、答えを見つけられずにいます。


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母の味(再掲)

母の味



風邪をひいたようなので、けんちん汁を作りました。

幼い頃、とまとが風邪をひくと、母はよく、けんちん汁を作ってくれました。
人参・大根・しいたけ・里芋。
野菜がたっぷり入ったけんちん汁は、飲むと体が温まり、また栄養も豊富なので、いい風邪薬になりました。

しかし、毎冬けんちん汁を飲みながら、とまとが不思議に思っていたことがあります。
それは、けんちん汁に入っているお豆腐が、いつも潰れていることでした。
最初は、母が誤って、豆腐を崩してしまったのだろうと思っていました。
ところが、いつ食べても、けんちん汁のお豆腐は崩れています。
煮ている間に、豆腐が潰れてしまうのでしょうか?
しかし、お味噌汁や、鍋ものに入っているお豆腐は、潰れていません。
みんな、ちゃんと四角い形をしています。
「なんで、けんちん汁のお豆腐は、いっつも潰れてるんやろう」
それは、長い間、とまとの謎でした。

お恥ずかしい話ですが、どうしてけんちん汁の豆腐が潰れているのか、その理由を知ったのは、つい最近のことです。
とあるテレビ番組で、けんちん汁の作り方を説明していて、その中で教わりました。

そもそも、けんちん汁は、精進料理だったそうです。
だから、鶏肉も、豚肉も、魚介類も、入っていないのだそうです。
お寺さんで、何か集まりがあった時、檀家さんが持ち寄った、お野菜を煮て、そしてみんなに振るまった料理だそうです。
実に入っている肉物と言えば、お豆腐だけ。
それを、包丁で切って入れたのでは、とある人のお椀には3切れ、隣の人のお椀には2切れと言う具合に、不公平が生じてしまいます。
そこで、誰の椀にも、同じようにお豆腐が入るようにと、小さく潰して入れるようになったのだそうです。

しかし、このけんちん汁。
子供の頃は美味しいからと、何も考えずにバクバク食べていましたが、自分で作るとなると、結構、手間のかかる料理でした。
なにしろ、カレーのように、材料を乱切りにしてお鍋にポン、と言うわけには行きません。
大根も、人参も、こんにゃくも、マッチ棒くらいの大きさに切り揃えます。
冬の事。
長時間台所に立って、根菜を切り揃えるのは、今のように暖房が完備されていない時代、母にとって、決して楽な仕事ではなかったでしょう。
母の、子を思う心があればこそ、出来た事だと思います。

風邪をひいた日に、けんちん汁を作り、それを飲みながら、改めて、先人の知恵と、母の有難さを味わった、とまとでした。


・・・・・お知らせ・・・・・
ただ今とまとは『高知・旅づくりコンテスト2009』に参加しております。
そちらに、長編の旅レポート『必見! 土佐の秘密♪』を掲載して頂いておりますので、ぜひご一読くださいm(__)m
当ブログの「お知らせ」記事には、拍手が60以上あるのに、コンテストのポチは40しかない、とまとです(T_T)

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誰が為に…

誰が為



中学生の時、とまとは勉強が、あまり好きではありませんでした(←控え目に表現しております。
中でも英語は、とまとの天敵でした(笑

複数形の「s」とは、なんとか仲良くなれました。
所有格の「s」も、どうにかお付き合いできました。
3単元の「s」とも、親しいとまでは行きませんが、顔見知り程度のお付き合いはできました。
が、しかし!
能動態と受動態の壁は、乗り越えられませんでした(T_T)

そんなとまとですから、試験前の勉強は、苦痛でした。
なので思わず、こう言ってしまいました。
「なんで日本人やのに、英語の勉強、せなあかんのやろう?」
すると、横で枕カバーを縫っていた母が、手を止めて、言いました。
「とまと、頼みがあるんやけど、ええか?」
「うんええで。また、針に糸を通すの?」

余談ですが、とまとの母は目が不自由だったので、針の穴に糸を通すのは、いつもとまとの仕事でした。
でも、縫い跡は、目が見えるとまとよりも、目が不自由な母の方が、まっすぐでキレイでした。
不思議です。

「お前もう、明日から、ご飯食べるの、止めてくれへんか?」
「はあ?」
「お前みたいな娘に、飯を食わす為に、毎日一生懸命働いてんのかと思うと、母ちゃん、情けなぁなって来たわ。頼むから、もう飯食わんといてくれ」
…そこまで言うか(^^;
とまとは思わず、言い返しました。
「だって、家は貧乏やから、ハワイとかグアムに、旅行に行くことなんかないやん? 大人になってからも、別に通訳とかスチュワーデスになりたいなんて思ってないし。なら、日本人やねんから、日本語さえ、しゃべれたら、ええやん!」
「しゃべられたら、や!」
母が、ピシリと言いました。
「分かった。母ちゃんが悪かった。さっき、明日から飯食うな、言うたんは、取り消すわ……。もう、今夜から食うのやめてくれて!」
どうやらとまとは、墓穴を掘ってしまったらしいです。

でも、何がどう悪かったのか、サッパリ分かりません。
すると、母は厳しい顔をして、言いました。
「お前は、街中で困ってる人を見かけても、日本人にしか親切にする気はないんやな。」
「そんなことないで。どこの国の人でも、困ってるんやったら、手伝うで。」
とまとは、神戸で育ったので、街中に外人さんがいることに、それほど違和感を持たずに、育ちました。
アパートの隣の部屋の住人が留学生だったこともあります。
むしろ、神戸以外の土地に住むようになって、街中で外人さんを見かけないことに、ビックリしてしまいました。
「でも、言葉が分からんかったら、手伝いようが、ないやろう?  顔色が悪かってお腹を押さえとっても、トイレに行きたい言うてんのか、病院に行きたい言うてんのか、ご飯が食べたい言うてんのかまでは、理解できへんのとちゃうか?」
「そ、それは…」
「日本に来るんやったら、ちゃんと日本語を学んでから来るべきやと、思うんか? せやけど、人の事情はそれぞれや。自分から望んで、日本に来た人ばっかりやない。来る前に、日本語を勉強できるような人、ばっかりでもない。それどころか、ちゃんとした学校に通えたかどうかも分からん。子供が全員、安心して学校で勉強できるような国は、そんなにぎょうさん、ないからな。日本は、珍しい国なんやで。」
「ふうん。」
「そんな風に、ちゃんと勉強することができひんかった人が、日本に来て、困ってるのを見ても、お前は手を貸そうとは思わんのやな。そうゆう時の為に、相手の言葉が理解できるようになっとこう、その手初めてとして、まずは英語を勉強しようとは、考えへんのやな?」
「そ、それは…」
「お前が英語を勉強するのは、グアムやハワイに遊びに行く為か? 将来に就く仕事の為、つまり、自分がお金儲けをする為なんか? 困ってる人に力を貸す為に、勉強をしようとは、考えてないんやな!」
ドっカーン!
バリバリバリ!!
大きな雷落とされてしまいました。
一言も言い返せないとまと。
「遊ぶ為、自分の金儲けの為だけに勉強するような奴に、食わせる飯なんかない! もうお前、明日から学校に行くな!! 変わりに、自分の食い扶持を、自分で稼いで来い!!!」
「ゴメンなさい。」
母のあまりの剣幕に、とまとの目から、涙があふれました。
そんなとまとに、母は噛んで含めるように言いました。
「勉強は、自分の為にするもんやない。他人様が困ってる時、力を貸せるように、前もって準備をしとくこと。それが、勉強や。テストで何点取ろうが、そんなもん勉強したとは言わん。自分の知ったこと、学んだことが、他人様の役に立って、初めて、『勉強した』って、言えるんや。勉強言うのは、井戸を掘るようなもんやねん。」
「井戸?」
「そうや。喉が渇いてから、井戸を掘り始めても、間に合わんやろう?  勉強も一緒や。その知識が、いつ必要になるかわからんけど、いつかきっと必要になる日が来るはずや。その日の為に、自分の頭の中に、井戸を掘ってると思うたらええ。でもそれは、自分の為の井戸やない。いつか、喉が渇いて困ってる人に、水を飲ませて上げる為の井戸なんや。」
「人の為の、井戸?」
「そうや。人様の役に立つように。それが無理なら、せめて人様に迷惑をかけずに済むように。勉強言うのは、その為にするもんなんや。」
「……」
「何が必要になるか分からんから、いろんな事を、広く浅く知っといたらええ。その為に、学校では、いろんな事を教えてくれることになってるんや。学んだ事は、ムダにはならん。いつかどこかで、必ず役に立つはずや。いや、役に立つように、せなあかん。始めからムダな知識なんかないねん。学んだ事を、お前がムダにすることはあるかもしれんけどな。だから、どんな科目でも、どんなことでも、一生懸命に勉強せい。いつか、どこかで、誰かの役に立たせる為、そない思うて勉強せえ。それなら、テストの点数が何点やっても、母ちゃんは文句は言わん。」

あれから、およそ30年。
何の為に勉強するのか?
誰の為に勉強するのか?
そう考えながら、とまとは今日も、セッセと頭の中の井戸を掘っています。
いつか、他人様の役に立てる日まで……



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良かった♪

良かった



とまとが、小学校に上がる前のこと、母に言われて、近所のお店やさんに、醤油を買いに行きました。
その帰り道、余所見をして歩いていたとまとは、川に落ちてしまいました。
川と言っても、大人ならヒョイと跳び越えられそうな、小さな水路です。
深さは子供の背丈よりちょっと高い程度。
水もチョロチョロしか流れていません。
しかし、余所見をして歩いていたとまとは、見事に転げ落ちました。
醤油のビンは割れ、とまとも濡れてしまいました。
泣きながら家に帰ると、事情を聞いた母が、
「ああ良かった。」
と、言いました。
「川に落ちたのに、何がいいんよ!」
喰ってかかるとまとに、
「ずっと前、あの川に落ちた子供が、石で頭を切って、何針も縫ったことがあるんやで。お前の頭の代わりに、醤油のビンが割れてくれたんや。良かったなあ、その程度で済んで助かった。嬉しいなあ、ありがたいなあ。」
そう言われると、無傷で済んだとまとは、とてもいい事だったような気がしました。
母につられて、とまとも、
「ああ、良かった。」
と、言いました。

とまとが小学校1年生の時。
古いアパートの2階に住んでいました。
学校から帰って、階段を駆け上り、一番上まであと一段、と言うところで、階段を踏み外し、下まで落ちてしまいました。
ドドドドドドド…ダン!
大きな音に、驚いた母が飛び出して来ました。
どこも痛くなかったけれど、びっくりして泣きだしてしまったとまと。
そんなとまとを見て、母は、
「ああ、良かった。」
と、言いました。
「階段から落ちたのに、何がいいんよ!」
と、母をなじるとまと。
「お前が、元気に泣けて良かった。見てみ、あんな高いところから落ちたんやで。まともに頭を打ってたら、泣くことも出来ひんで。」
「でも…」
とまとは、クッションになってくれたランドセルを開け、情けない声で言いました。
「後で食べようと思って、持って帰って来た、パンがペシャンコやぁ~」
「お前の頭の代わりに、パンがつぶれてくれたんや。助かったなあ。嬉しいなあ。有難いなあ。」
「そうか、パンは、潰れても食べられるもんな。」
とまとも、良かったと思いました。

とまとが、小学校低学年の頃、だったと思います。
自転車に乗っていて、バランスを崩し、車にぶつかってしまいました。
幸い、車は信号待ちで止まっていたので、とまとに怪我はなかったのですが、車の横に、ひっ掻き傷が付いてしまいました。
当然、オーナーは怒り、とまとの家まで付いて来て、修理代を請求しました。
塗装し直すのに、10万円以上もかかる、と言うことでした。
貧乏だったので、それがどんなに大変なことか、子供のとまとにも理解できました。
「母ちゃん、ごめんな。そんなお金がいるような事して、ごめんな。」
申し訳なくて、とまとは以来、自転車に乗るのをやめました。
(そして、その後20年以上、自転車には乗りませんでした)
ところが母は、
「良かったなあ。」
と、言ったのです。
「お金がかかるのに、良かったん?」
とまとは、聞きました。
「もしも、傷が付いたのがお前の体の方やったら、10万円では済まへんで。嫁入り前の娘に、痕が残るような傷が付かんで良かった。お前の代わりに、向こうさんの車が傷付いてくれたんや。この程度で済んで助かった。嬉しいなあ、有難いなあ。」

とまとが危険な目に遭遇する(大概は自業自得)度、とまとのドジを叱る前に、
「ああ、良かった」
と、母は言いました。
不思議に思って、とまとがその理由を訊ねると、
「『良かった』、言う言葉はな、悪い神様の、嫌いな言葉なんや。この言葉を聞くと、悪い神様は、逃げ出してしまうんやって。反対に、善い神様は、『良かった・助かった・嬉しい・ありがとう』、ゆう言葉が好きで、その言葉を聞くと、寄って来るんやで。だから、何か悪い事があった時は、まず『良かった!』って言うて、悪い神様を追い払って、その後に善い神様が来てくれるように、『助かった、嬉しいな、ありかとう』って言うねん。」
と、教えてくれました。

「ああ良かった、助かった、嬉しいなあ、有難いなぁ。」
悪い神様を追い払い、善い神様を招く、母譲りのおまじないです。
危険な目に遭った時はもちろん、ちょっとイヤな思いをした時なんかにも、声に出して言ってみて下さい。
運が、好転するかもしれませんよ♪

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